『郵政民営化法案:衆院採決・攻防前夜』 2005年7月5日(火)

今日、衆院本会議で、郵政民営化法案の採決が行なわれ、233対228という僅差で、 なんとか可決されました。
採決の前夜、自民党若手議員は、いつものように居酒屋に集まって、情報交換し てました。 私も、いつものように、その場に顔を出して、若手議員の声を聞いてました。

城内実議員が席を立っ ていたとき、上着に入れていた携帯が鳴っていたので、出てあげました。
「はい、もしもし」
「安倍ですが、どうだね、腹を決めたかね?」
電話は、自民党の安倍幹事長代理からだった。
私は、どうしようか迷ったが、とりあえず、
「いやぁ〜、あの、その、いろいろありまして、、、」と言っておいた。

「そうだろうと思った。でも、明日は、絶対、賛成に投票してくれよ」
「あの〜、投票しないと、どうなりますか?」
「前にも言ったろ? 次の選挙で、自民党の公認は得られないよ」
「それでも、反対しますと言ったら?」

安倍幹事長代理は、ちょっと時間をおいた。
「本気かよ。いいか、公明党も支援しないといってるんだぞ。
それで、当選できるのか?」
「それは、わかりませんが、選挙になるんですかねぇ〜?」
「なるよ。小泉総理のことだ、郵政民営化法案が否決されたら、必ず解散だ。
自民党の公認なし、公明党の支持なしで、どうやって選挙をするんだ?」

私は、少し時間をおいた。
「しかし、安倍先生、今度の郵政民営化法案で、郵便局は、どうなりますか?」 「民営化されて、よくなるよ。小泉総理の改革の本丸なんだからな」
「いや、小泉総理の位置づけが正しいんでしょうか? そこが問題じゃないで すか?」「どういうことだ?」
「ですから、小泉総理が“改革の本丸だぁ〜”と騒いでるから、みなさん、それ に付き合ってるだけでしょう? ほんとの改革の本丸かどうか、考えたこと、あ りますか?」

安倍幹事長代理は、言葉に詰まったようだった。
「何を言ってるんだよ。小泉総理は、郵政民営化を掲げて総裁になった。われわ れは、それを支持したんだよ。国民の審判も受けた。郵政民営化に、みんな賛成 ということだろ。いまさら、何を言ってるんだよ、ったく!」
「じゃ、安倍先生、郵便局が民営化されて、どうなるんですか?」
「民営化されて? そりゃ〜、よくなるんだよ」
「でも、安倍先生、考えてください」
「何をだ?」

「国鉄は民営化されましたが、今、新幹線の建設は、どうなってます?」
「国と地方でやってるが、それが、どうした?」
「国鉄は、民営化してよくなったといいますけど、国のお金で新幹線を作ってる じゃないですか。結局、国民のお金でしょ?」
「新幹線が欲しいと言ってる地方もあるんだよ。その声に応えるのが政治だろ。
それが、国民のためだ。当然じゃないか」
「でも、先生。国鉄が民営化されて、廃線になった路線がいくつもありますが、、、。 あそこの住民は、不便してると思いますよ、、、」
「国鉄と郵便局は、違うよ」

「そうでしょうか? それじゃ、道路公団は、どうですか?」
「今度は、道路公団か、、、。それが、どうしたというんだ?」
「道路公団は、民営化されますが、公団が作らない道路は、国がお金を出して 作るってことじゃないですか」
「そうだよ。儲からなくても、住民に必要な道路は、国が作るしかないだろ」
「郵便局も、そうなるんですか?」
「いや、郵便局には、国が、お金を出すことはない」
「それじゃ、地方が切り捨てられても、文句は言えないじゃないですか」
「大丈夫だよ、竹中さんが、そこは、ちゃんと考えてくれたから。安心してろよ」

「でも、あれでしょ、先生。郵便局から、特殊法人や国債に、湯水のように流れ込 む郵貯・簡保の資金が問題なんでしょ? 郵政民営化の本質は、そこでしょ?」 「そうだよ」
「だったら、公社のままでも、郵貯・簡保の資金が流れ込むのをシャット・アウト すればいいだけの話じゃないですか? 民営化は、必要ないでしょう?」
「理屈は、そうなるが、、、。どうやってリンクを絶つというんだ!?
結局、民営化しかないんだよ」
「でもですよ、民営化しても、国債をこのくらい買ってくれ、ここの特殊法人に 融資してやってくれって、政治が口を出すんでしょ? それなら、同じですよ」
「それは、わからんが、、、」
「どうしてです? やるに決まってますよ」
「いや、わからんよ、、、」

「まぁ、とにかく、明日は、賛成に投票するんだぞ。
おまえ、オレが応援演説に行ったから当選できたんだろ!?
恩を忘れるなよ」
「はぁ〜、、、。でも、安倍先生。
いつも、“信念を貫け”とおっしゃってるじゃないですか」
「時と場合によるさ。
恩を忘れて、信念を貫いてもなぁ〜。そんなヤツに将来はないぞ」
「ですが、安倍先生。冷静に判断してみたんですよ」
「何をだ?」
「ここで、特定郵便局に恩を売っておけば、選挙になっても、支援してもらえます」 「だが、自民や公明は支持しないぞ」
「自民の基礎票、公明の基礎票が、自民の公認候補に行くとしても、それは、民主 党の候補と相殺されるくらいでしょう。私への支持票と同じくらいです。そこへ特 定郵便局の票が加われば、私が当選です」

安倍幹事長代理は、深くため息をついた後、言った。
「なるほど、考えたな。
だが、自民党が公認候補を立てると思うか?」
「えっ、まさか!? 民主党に相乗りですか?」
「どうかな、、、?
だから、明日は、わかってるな、絶対、賛成に投票だぞ」

私は、トイレから帰ってきた城内議員に、「安倍さんから、電話があったよ」と 伝えた。「なんの話?」「うん? 明日は、がんばれって」「それだけ?」 「うん。それだけ」と伝えた。




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